今回も更年期障害の治療のお話です。
今回は更年期障害治療のもう一つの柱である漢方治療について。
婦人科外来をしていると漢方はなかなか人気です。
「安心感がある」
「体に良さそう」
など良いイメージがあるのか
おすすめすると多くの方が処方を希望されます。
漢方医学では、体の不調は「気(き)・血(けつ)・水(すい)」のバランスの乱れから生じると考えます。
更年期障害は、特に「気の滞り」「血の不足」「水の巡りの悪さ」が関係していると考えられています。
・気の滞り(気滞):ストレスが多いと、気の巡りが悪くなり、イライラや不安、のぼせなどの症状が出やすくなります。
・血の不足(血虚):血が足りないと、冷えやめまい、動悸、肌の乾燥、疲れやすさが出ることがあります。
血(けつ)は、西洋医学の血液と似ていますが、それだけではなく体全体に栄養や潤いを与え、心と体の調子を整えるものを指します。
・水の巡りの悪さ(水滞):体内の水分バランスが乱れると、むくみ、頭痛、めまい、関節の痛みなどが起こりやすくなります。
本来漢方は、
症状に対して処方するのではなく、
体質(証)に合わせて処方するものです。
そのため、同じ症状でも体質(証)によって適した処方が異なるのですが、
今回は更年期障害に効く代表的な処方を紹介します。
① 加味逍遙散(かみしょうようさん)
対象となるタイプ:ストレスやイライラが強い人、のぼせやホットフラッシュがある人
「女性のための漢方」とも呼ばれることがある薬で、特に更年期のイライラ、不安感、ほてり、発汗などに効果が期待できます。気の巡りを改善し、精神的な安定をサポートします。
② 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
対象となるタイプ:冷えやむくみ、貧血傾向のある人
血の巡りを良くし、貧血や冷え性を改善する作用があります。疲れやすさや、ふらつき、むくみが気になる人に適しています。
③ 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
対象となるタイプ:血行不良や肩こり、のぼせ、頭痛がある人
血の滞りを改善し、のぼせや肩こり、頭痛を和らげる作用があります。比較的体力がある人に向いています。
④ 温経湯(うんけいとう)
対象となるタイプ:冷えが強く、月経不順や乾燥が気になる人
血行を良くし、冷えや乾燥による不調を改善します。のぼせと冷えが同時にある場合にも適しています。
⑤ 酸棗仁湯(さんそうにんとう)
対象となるタイプ:不眠や不安が強い人
眠りが浅い、寝つきが悪い、夜中に目が覚めやすいといった不眠症状に効果が期待できます。精神を落ち着かせる作用があり、リラックスした眠りをサポートします。
⑥ 苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)
対象となるタイプ:めまい・ふらつき・耳鳴りがある人
体内の水分バランスを整え、特に「立ちくらみ」「回転性めまい」「耳鳴り」に効果が期待できます。水分代謝を改善し、低血圧や貧血によるふらつきにも用いられます。
いかがでしょうか。
気になる漢方はありましたか?
一般的に
ホットフラッシュならホルモン補充療法
イライラ、落ち込みなど精神症状なら漢方薬
がよく効きます。
月経が乱れてきて、気分もすぐれないというような方は是非婦人科でご相談ください。
楽に過ごせるようになるかもしれません。
また更年期の時期の不調が全て更年期症状とは限りません。
生活習慣病やガンも年々増えてくる時期です。
更年期症状があってもなくても、
50歳になったら一度婦人科を受診することをお勧めします。