毎月の月経を楽にしませんか?

目次

LEP製剤のお話

緑が濃い季節になりました。

急に強くなった日差しや寒暖差にぐったりしている方も多いのではないでしょうか。

疲れている時は他の事が重なるとグッと負担に感じるもの。

一つならなんとかやり過ごせるけど

あれもこれも重なると悲鳴を上げたくなる、なんてことありませんか?

女性の場合、毎月の月経もストレスの一つです。

下腹部の痛み、頭痛、吐き気、気分の落ち込み…。

こういった不快な症状を毎月我慢するのは大変辛いことです。

今回は、月経の不快な症状を楽にするための治療のひとつ、**LEP製剤(低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬)についてお話しします。

LEP製剤ってどんな薬?

LEP製剤は、2種類の女性ホルモン(エストロゲンとプロゲスチン)を含むお薬です。

ホルモンのバランスを安定させ、月経にともなう痛みや不調を和らげてくれます。

LEP製剤は健康保険が適用されるため、自己負担を抑えて治療を受けることができます。

ここで一つ疑問が出てくるかもしれません。

「ピルとLEP製剤は違うものなの?」

基本的に、ピルとLEP製剤は同じものです。

ピル(OC)も同様に2種類の女性ホルモンを含み、月経にまつわる症状を和らげてくれます。

LEP製剤との違いは、製剤設計上不正性器出血が少ない事、避妊を目的としているため自費となる事です。

LEP製剤の効果

LEP製剤には、次のような効果があります。

月経痛の軽減:子宮内膜が薄くなり、月経量が減ることで痛みも軽くなります

月経周期の安定化:生理のタイミングが安定し、予定が立てやすくなります

月経前症状の改善:ホルモンの波を整えることで、気分の不調や身体症状が軽減されます

貧血の予防:出血量が減ることで鉄分の消耗も抑えられます

ニキビの改善:一部のLEP製剤では肌の調子が整うことも

何歳から使えるの?

「ホルモン剤は大人の女性が使うもの」

と思っている方もいるかもしれません。

LEP製剤は月経症状が辛い方であれば何歳でも使えます。

・勉強に集中できない

・スポーツに支障がある

というような理由で中高生に処方することはよくあります。

最近は小学生に処方することもあります。

月経痛を放置すると子宮内膜症の発症リスクが上がることもわかっており、 

月経の辛い症状は今や我慢するものではなく

治療するべきものなのです。

婦人科受診を躊躇う理由の一つに

婦人科の診察が心配

ということがあると思います。

私たちは性交未経験の方に内診をすることはありません。

こうした患者さんを診る時は

問診と血圧測定、採血とお腹の上からの超音波検査をします。

症状によっては肛門から超音波検査をすることもありますが、

急を要する状態でなければ

否応なしに初診で検査する、ということはありません。

ですからご安心くださいね。

お子さんが辛そうであれば、まずは婦人科で相談してほしいなと思います。

副作用や注意点は?

副作用としては、吐き気・乳房の張りは、内服開始時によくみられますが、ほとんどの場合一時的です。

少量の不正性器出血はよくある副作用ですが、

エストロゲン量が低用量なため起きることで心配な症状ではありません。

不正出血が苦痛という場合は他のLEP製剤やピルに替えて様子を見ます。

月経痛も月経前症状も楽になるのに、

不正出血のためにドロップアウトしてしまうのは残念なことです。

婦人科医には色々な手がありますので、気になる副作用がある時は遠慮せず相談してください。

LEP製剤の一番心配な副作用は

血栓症(血のかたまりによる血管の詰まり)です。

以下に当てはまる方は血栓症のリスクが高いため残念ながら内服できません。

・喫煙習慣がある(特に35歳以上)
・高血圧、糖尿病、肥満の方
・血栓症や脳梗塞、心筋梗塞の既往がある方

血栓症のリスクはエストロゲンに血を固まらせる作用があるため生じますが、

エストロゲン量を減らせばそのリスクは低くなるとわかってきました。

そのためホルモン製剤のエストロゲン量を減らす取り組みが長年進み

現在のLEP製剤やピル(OC)が開発されました。

アメリカの論文によると

LEP製剤非使用者の血栓症リスク 1−5/1万人

LEP製剤使用者の血栓症リスク 3−9/1万人

とLEP使用により血栓症リスクは約2倍になります。

2倍というと高い感じがするかもしれませんが、

妊婦の血栓症リスク 5−20/1万人

褥婦(産後6ヶ月以内)の血栓症リスク 40−65/1万人

と出産に関する血栓症リスクの方がLEP製剤の血栓症リスクより余程高いのです。

またほとんどの血栓症は治療可能で

命に関わるリスクは妊産婦死亡のリスクよりずっと低いです。

LEP製剤使用者死亡率 1/10万人

妊産婦死亡率 8/10万人

日本の調査では

LEP使用者の血栓症リスク 1.5/1万人

とアメリカに比べさらに低くなっており

血栓症のリスクを恐れるより

LEP製剤を使って生活の質が上がるメリットの方がずっと高いと言えます。

とはいえ、血栓症を予防するために

・脱水にならないよう適度に水分を摂る
・長時間動けない時は足首を回す、膝を曲げ伸ばしするなど身体を動かす

ことを心がけましょう。

最後に

最近は「フェムテック」という言葉も良く聞きます。

フェムテックとは、Female X Technologyの造語で、女性の健康を支えるなんらかの商品やサービスのことです。「テック」というとAI(人工知能)やアプリなどの技術を想像しがちですが、現在はそういった技術が使われていなくても女性の健康を支えるものは「フェムテック」と呼ばれており、技術的な側面より、「女性のための」といった側面が強い言葉です。

月経にまつわるストレスを少しでも取り除き、

女性が伸び伸びと力を発揮できるようにすることは、

今や社会の共通認識でもあります。

婦人科ではLEP製剤を含め、症状に合わせた選択肢がいくつかあります。

いつも抱えていたストレスが減れば、考え方も行動も変わってきます。

「この症状なんとかならないかな」という方、

一度婦人科を受診してみませんか?

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この記事を書いた人

前原順子のアバター 前原順子 産婦人科専門医

1998年名古屋市立大学医学部卒業。産婦人科専門医。名古屋市立大学病院、公立陶生病院等で産婦人科診療に従事。2010年より前原外科・整形外科にて注入治療を始める。現在は婦人科医、注入治療医として複数のクリニックに勤務。二男一女の母。

ヒアルロン酸、ボトックスの注入治療を行なっています。注入治療により、大きく顔立ちを変えることなくお顔全体をバランスよく若返らせることができます。婦人科医として年齢サインに悩む女性の心を勇気付けたい、その方法の一つを注入治療と考えています。

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