注入治療のトラブル

ヒアルロン酸注入治療は手術など他の治療に比べて気軽なイメージがあると思います。

でもトラブルがないというわけではありません。

治療を受ける前に知っておいてほしいトラブルについてまとめてみました。

1.内出血

針を刺す以上どうしてもあり得ます。施術直後は見られなくても翌日や翌々日になって出てくることもあります

当日は飲酒、長い入浴、激しい運動、マスクを控えましょう。体が温まると血管が拡張して出血しやすくなります。多くは2週間以内に引いていきます。

2.腫れ

反応性の浮腫で当日の夜から翌日にかけておき1週間以内に軽快します。

赤みはありません。

軽度のものは10人に1人くらい、重度の腫れは100人に1人くらいあります。

重度というのはどれくらいかというと『お岩さん』くらいです。

私も経験したことがありますがご本人もご家族もちょっとびっくりします。

自然経過でも軽快しますが、ステロイドや利尿剤を使うと早く引いていきます。

内出血と合わせて起きることもあります。

3.遅発性有害事象

遅発性アレルギーと言われることもありますが繰り返すことは稀で一般的なアレルギーとは異なります。

頻度は1%以下と言われています。

多くは注入後1ヶ月後から1年以内に起き、感染、ワクチン接種、幹細胞コスメの使用などがトリガー(きっかけ)となって発症し、注入部位が腫れます。

局所の浮腫と考えられており治療は2.と同様にステロイドや利尿剤などで行います。

多くは1−2週間で軽快しますが、ヒアルロニダーゼで溶解したりステロイドの局所注射などを行う場合もあります。

4.塞栓

ヒアルロン酸注入治療の最も心配な合併症です。

ゼリー状のヒアルロン酸が血管を塞栓し血流障害を起こすことで、皮膚循環障害、皮膚壊死、失明など重篤な結果をもたらすことがあります。

鼻、ほうれい線、口周囲、額が好発部位です。

塞栓が起きると痛みが出たり皮膚が白っぽく変化しますが、直後ははっきりしない場合もあります。

治療はできるだけ早期にヒアルロニダーゼを投与開始することです。

塞栓がはっきりしない場合は院内でしばらく様子を見て、それでもわからない場合は『疑わしきはヒアルロニダーゼ』です。

早期に治療開始すれば時間がかかったとしても良くなるケースが多いからです。

せっかく注入したヒアルロン酸ですが塞栓が否定できないなら溶かす、そのくらいの意識です。

幸い今まで塞栓の経験はありません。

塞栓を起こさないためには解剖知識、正確で繊細な手技、ゆっくりと注入することが重要です。

これからも一生起こさない覚悟で一つ一つの注入に向き合っていきます。

 注入治療を行う以上塞栓の可能性をゼロにはできないことは事実です。

塞栓になった時すぐ治療開始すること、塞栓が否定できない時躊躇せず溶かすこと、そのことを常に肝に銘じています。

またヒアルロニダーゼを常備し、いざという時にすぐ使えるようにしたり、スタッフとの勉強会も定期的に行っています。

 普段からできることは全てやっておくことが注入治療に従事する私の責任です。

リスクのない治療はない 

今日は注入治療の影についてお伝えしましたが、そもそもリスクのない治療はありません。

そしてリスクがあるとしても注入治療にはやはり利点があります。

それはヒアルロニダーゼという溶かす製剤があるということです。

ヒアルロン酸以外の注入治療で塞栓が起きた場合治療することができません。

また治療が不満足だった時溶かすことができる、可逆的な治療も他にありません。
色々な治療を見渡してみて、やはり注入治療は良い治療だなと思います。

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この記事を書いた人

前原順子のアバター 前原順子 産婦人科専門医

1998年名古屋市立大学医学部卒業。産婦人科専門医。名古屋市立大学病院、公立陶生病院等で産婦人科診療に従事。2010年より前原外科・整形外科にて注入治療を始める。現在は婦人科医、注入治療医として複数のクリニックに勤務。二男一女の母。

ヒアルロン酸、ボトックスの注入治療を行なっています。注入治療により、大きく顔立ちを変えることなくお顔全体をバランスよく若返らせることができます。婦人科医として年齢サインに悩む女性の心を勇気付けたい、その方法の一つを注入治療と考えています。

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