前十字靭帯損傷
前十字靭帯は、大腿骨と脛骨を結んでいる靭帯で、脛骨の大腿骨に対する前方への移動や、前内方への回旋を防止する役割を担っています。
前十字靭帯損傷とは、スポーツをしているときによく起こる損傷で、特にジャンプして着地したときや、急に方向転換したとき、急に止まったとき、膝の外側から強い衝撃を受けたときなどに強い負荷がかかり(約200キロ以上の力)発症するといわれています。痛みは、2、3日でほとんどなくなり、2週間も経てば、不安定感はありますが普通に歩けるようになるため、違和感を感じていても放置してしまう場合が多いのですが、前十字靭帯の損傷は放っておくと半月板の損傷につながってしまうこともあるため、早いうちに適切な処置を行う事が大切です。
症状
スポーツをしている最中になることが多く、急に膝がガクっとはずれたり、捻ったような感覚があって炎症が起き、膝の膨張と強い痛みが起こります。膝関節の腫れの原因が血液である場合は、前十字靭帯損傷が疑われます。
保存療法
受傷後2〜3週間、ギプスや装具(ニーブレス装具等)による固定を行います。その後、硬性装具をつけ膝関節の可動域・筋力増強などのリハビリテーションを行って行きます。スポーツ復帰は、3〜6カ月を目標にしています。保存療法をしても、膝の不安定感や痛みが残っている場合は手術を行います。
手術療法
関節鏡視下
前十字靭帯再建術にはこれまでに様々な方法が試されてきましたが、現在最も安定した成績が出続けているのが「自家腱移植術」です。これは、自分の体の中から移植に使えそうな腱を取り出し、損傷してしまった靭帯のかわりに移植する手術法で、全身麻酔にて行います。関節鏡視下で行うので膝の前方に2カ所ほど1cmぐらいの穴を開けます。本院では移植する腱は半腱様筋を使用するため、下腿内側を3〜5cmほど切開し、取り出します。取り出した腱を3〜4重に折り、前十字靱帯の代わりとして移植します。手術にかかる時間はおよそ2時間で(同時に半月板や軟骨の損傷に対する処置も行う場合はもっとかかります)、入院期間は約2週間です。