野球肘
概要
野球による投球動作、特に成長期の投手に多く発生するオーバーユース(使いすぎ)が原因で起こります。
肘の①内側 ②外側 ③後方に発生する投球時の痛みが主症状の障害です。
①内側型:内側側副靭帯損傷、剥離骨折など
症状
投球をした際に肘の内側に牽引力が加わり、筋肉や靭帯、神経が伸ばされ細かい損傷が生じます。
それにより、肘の内側の押した時の痛みや、腫れ、投球時の痛み、肘の関節の可動域の制限、小指側のしびれ感などが出現します。重症例では、肘の内側の骨が牽引力によって剥離骨折を起こすこともあります。
また、繰り返しストレスが加わることで靭帯が緩くなり、肘関節の機能不全が生じ、その結果、全力投球が困難になり、球速の低下、遠投距離の低下といった投球障害がみられます。
保存療法
投球動作を含む、肘へ負担のかかる動作をしばらく休止し、アイシング、消炎鎮痛剤の内服薬や注射などを行いながら、肘関節周囲もしくは肩、体幹といった部位の機能改善を行います。
安静期間を経たのち、復帰に向けて不良な投球フォームの修正やトレーニングを行っていきます。
手術療法
保存療法を行っても改善がない場合、靭帯を再建するなどの関節鏡視下手術を行います。
②外側型:上腕骨小頭離断性骨軟骨炎
症状
外側型は、上腕骨小頭や橈骨に圧迫力が加わり、骨の壊死、欠損、遊離などの離断性骨軟骨炎が発生します。
肘外側(上腕骨小頭)の痛みや、肘の曲げ伸ばしができなくなるロッキング症状を呈することがあります。
*画像診断により、重症度を判断します(透亮期、分離期、遊離期)。
保存療法
- 透亮期〜分離期前期は保存療法が適応となります。
- 投球の中止、患部の安静
- リハビリテーション(関節可動域の改善、再発予防のための全身の機能訓練、フォーム指導など)
手術療法
主に、分離型後期や遊離型が対象になります。保存療法で回復しない場合や損傷が大きい場合には関節鏡を用いた手術を行います。
手術は、傷んだ肘関節に膝関節からとった軟骨を移植します。術後3〜4カ月で投球開始。
徐々に6カ月程度で投球動作が可能になるようにリハビリテーションをすすめていきます。
③後方型
症状
減速期(フォロースルー)の肘が伸びたときに、牽引力が加わり剥離や疲労骨折などが起こることがあります。
肘後方の圧痛、投球時痛、ロッキング症状を呈します。
保存療法
投球動作を含む、肘へ負担のかかる動作をしばらく休止し、アイシング、消炎鎮痛剤の内服薬や注射などを行いながら、肘関節周囲もしくは肩、体幹といった部位の機能改善を行い、骨癒合状態を確認していきます。
安静期間を経たのち、復帰に向けて不良な投球フォームの修正やトレーニングを行っていきます。
手術療法
保存療法を行っても改善がない場合、手術方法として鋼線やスクリューによる固定法や、骨棘を削る手術を行います。